電鉄系資本における沿線開発と遊園地経営に関する研究

一宝塚を事例として一


佐藤 力


指導:浅香勝輔教授・村内明教授・小嶋勝衞教授・三橋博巳専任講師

 日本の私鉄事業におけるその沿線開発は、極めて重要度が高く、単に、輸送手段のみでなく土地建物売買、娯楽施設糸雛享などの範囲に及んでいる。娯楽文化の著しい発展を見せた大正期に、「娯楽」というものに着目して、箕面有馬電気軌道(現・阪急電鉄)の終点、宝塚に家族的な娯楽施設を設け、遊園地経営を行うことにより、通勤ラッシュアワーの混雑と反対方向に、運輸効果をうまく回転させる方法を案出した小林一三の手法は、現代までの各私鉄の沿線開発や娯楽施設設置の原型となっている。また、宝塚市の住宅化を見てみると、周辺都市に比べてかなり遅い傾向にあり、その背景にあるものは、当時の輸送能力では都心から遠すぎることと、宝塚独白の歓楽街としてのイメージが住宅地化への開発を遅らせた原因であると考えられる。